刑事弁護コラムの8本目は「依頼者と被害者の間に立つ」です。

◆ 示談(交渉)は奥行きと幅をもった弁護活動

自白事件として行う場合であれ、否認と並行して行う場合であれ、このような意味合いで行われるが故に、示談(交渉)は、非常に奥行きと幅をもった弁護活動となります。

もっとも、弁護士は、裁判官とは異なり、あくまで依頼者の弁護人として活動しますので、被害者の方の肩ばかりを持つことになれば、何のために弁護士を頼んだのか(受任者としての忠実義務違反・利益相反という、別の法律問題が出て来かねない)、ということになりかねません。

一方、依頼者の肩ばかりを持つと、被害者の方の被害感情を逆撫ですることはあっても、示談成立はおよそ不可能になってしまいます。

◆ 依頼者と被害者が納得のいく、現実的で見通しのある解決策を提示する

大切なことは、依頼者にとっても、被害者の方にとっても、筋道立てて納得のいく説明を行い、現実的で見通しのある解決策を提示することであり、だからこそ、弁護士は、示談(交渉)を行う際、神経を研ぎ澄ませて双方の妥結点を探り、それを言葉にし、あるいは書面にするなどして、示談成立のために全精力を注ぎ込むことになります。