3.贈与税の問題

さらに、将来の養育費を一括で受け取る場合には、受け取った側に贈与税がかかる可能性があります。

養育費については、必要な都度支払われたものは非課税とされますが、まだ具体的に発生していない将来の養育費の一括払いは原則として贈与税の課税対象と考えられています。小学生の子どもの大学までの進学費用となると、贈与税の基礎控除額の範囲内を超える額になると思いますので、贈与税が課税される可能性が高いと思われます。

したがって、養育費の一括払いや算定表を超える額について相手方との合意ができたとしても、養育費の一括支払いとは明示せずに、原則として贈与税の対象とならない離婚による財産分与等の金額の中に含めて解決するほうがよいでしょう。ただし、財産分与についても、婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもあまりに多額である場合には、過当であると認められる部分に贈与税が課せられることがありますし、慰謝料についても、相当な範囲を超える過大な金額のものについては、贈与と認定される可能性があるので、注意が必要です。

なお、信託銀行に一括払いの養育費を預け、養育費に相当する給付金を継続的に子どもに支払っていくという養育信託を利用すれば、一定の条件を満たせば通常の養育費と同様に非課税扱いとされます。養育信託であれば、子どもには定期的に一定の金額が支払われますので、単に親権者に一括払いするよりも支払う側としては親権者の自己使用への不安感が小さくなり、一括払いに応じやすいこともあります。どうしても一括払いしてほしいという場合には、養育信託を活用することも一案でしょう。

4.まとめ

以上から、大学までの進学費用を養育費として離婚時に一括払いしてもらうことは、相手方が合意しなければ難しいでしょう。

また、贈与税の問題もありますので、慎重に検討したほうがよいと思われます。