A.B氏に対する義母様・保育園の法的責任の発生はやむを得ないかと存じます。

保育士には、業務上、守秘義務が課せられており、正当な理由なく、それを漏洩したことによりB氏が被害を被ったのであれば、それは賠償の対象になります。

その上で、「1.保育園の賠償の負担の有無や程度について」「2.全体の賠償金額について」回答させていただきます。

1.保育園の賠償の負担の有無や程度について

保育園が直ちに賠償責任を負わなくて良い、などということは決してありません。B氏は、もともと、保育園と契約を締結していたわけですから、保育園は、自己の無過失を証明しない限り、義母様と連帯して、B氏に対して、賠償責任を負担することになります。

保育園外・業務時間外のこととはいえ、B氏は、親戚等に現住所等を伝えないよう、予め保育園に要望していたとのことですから、そのことを義母様に伝え、B氏の意向を周知徹底していなかった保育園側には、過失が認められると思われます。したがって、保育園の責任は免れないでしょう。

この場合、A氏は、賠償責任全額を、保育園に対しても,義母様に対しても請求出来ることになりますが(トータルで請求できる金額は同一です)、仮に一方が、A氏に対して、賠償金を全額支払った場合、一方は、他方に対して、内部の負担割合に応じた求償金の支払を請求できます。

例えば、仮に義母様がA氏に対して、賠償金全額を支払った場合、義母様は、保育園に対して、賠償金額のうち●割を、保育園の責任によるものとして、その支払を請求できることになります。

保育園・義母様の内部的な負担割合が何割になるかは、ケースバイケースですが、

  • ・A氏がDV被害者であるということを義母様に教えていなかった等という保育園側の過失を重視すれば,保育園側の負担割合の方が大きくなります。
  • ・保育園外・業務時間外、という点を重視すれば、義母様の負担割合が大きくなります。
  • もっとも、どちらを重視するにしろ、義母様側が10割を負担させられるケースとは考えにくいように思われます。

    次ページ 「A.2.全体の賠償金額について」