A2.会計帳簿の閲覧謄写の手続きについてお話します

(1)会計帳簿の閲覧・謄写時の手続き

ア 請求の理由を明らかにしなければなりません

株主は、請求の理由を明らかにしなければなりません。具体的には、閲覧謄写請求の理由を明らかにする必要があります。

イ 請求の理由は、どの程度、具体的に記載しなければならないか

会計帳簿の閲覧謄写を請求する際に、請求の理由を具体的に明示しなければならない理由は、主の以下の2点です。

  • ①会社が理由と関連性のある会計帳簿の範囲を知り、閲覧拒絶の事由があるかを判断するため
  • ②一般的調査が安易に認められると、会社の営業の支障が生じるだけでなく、営業秘密が漏えいされたり、閲覧した株主により会計情報が不当に利用されるなどの危険が大きくなるため、具体的な閲覧謄写目的がある株主に限って、閲覧謄写をみとめるべき

そのため、会社が請求する理由をみて、関連性のある会計帳簿等を特定することができ、拒絶事由があるかどうかを判断できる程度に具体的な理由を記載する必要がある、と考えられています。

ウ 記載の具体例

具体的理由の記載例としては、

「○年○月○日の決算において計上されている○○項目の金額○○円は、不当に高額であるから、その内容及び発生理由について調査するため」

「取締役○○が代表者となっている○○株式会社との間の取引が急増しているので、過去○年間の同社との取引内容及び推移について調査するため」

といった記載です(山口和男、垣内正「帳簿閲覧請求権をめぐる諸問題」判例タイムズ745号4頁)。

エ 請求理由の裏付けとなる証拠まで必要か

たとえば、取締役の違法行為差し止め請求や、取締役の責任追及の代表訴訟、取締役の解任請求等を行う前提として、会社経理の状況を知るために、帳簿の閲覧謄写請求を行うのですから、請求理由の裏付けとなる証拠までは不要です。

(2)X会計帳簿閲覧・謄写請求があった場合の会社の対応

閲覧謄写請求があった場合、株式会社は原則としてこれに応じなければなりません。以下の事由がある場合にのみ、拒むことができます。(会社法433条2項)

  • ①請求者が、権利の確保または行使に関する調査以外の目的で請求をしているとき
  • ②請求者が、会社の業務遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求しているとき
  • ③請求者が、会社の業務と実質的な競争関係にある事業を営み、またはこれに従事するものであるとき
  • ④会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧または謄写によって知りえた事実を、利益を得て第三者に通報するために請求したとき
  • ⑤過去2年以内において、会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧または謄写によって知りえた事実を、利益を得て第三者に通報したことがある請求者の場合

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