3.相手方の有利/不利な点を見定める

「2 当方の有利/不利な点を見定める」作業を行った後、次に重要になるのが、相手方の有利/不利な点を見定めることです。この作業は、「2 当方の有利/不利な点を見定める」作業と裏腹な関係にはあります。

もっとも、例えば、契約書はあるものの、相手方が指摘する問題点が契約条項から抜け落ちていた場合や、契約トラブルやそれに派生する問題が相手方の業法違反等を問われる可能性がある場合等、相手方の不利な点(≒当方の有利な点)を見定めることで当方の有利な点がみえてくる場合も多数あります。

ある売掛金代金債権のトラブルで、依頼会社との法的紛争やそれに関わる問題が上場会社の適時開示義務に該当するのではないか、とこちらが指摘したところ、当初頑なに支払を拒んでいた相手会社(上場会社)が直ちに全額支払ってきたケースもありました(開示による株価下落の損失を防いだものと思われます)。ほかにも、損害賠償請求を行う際に、依頼会社との法的紛争やそれに関わる問題が業法違反に該当するのではないか、とこちらが指摘したところ、速やかに賠償金を支払ってきたケースもありました(業法違反による許可取消を防いだものと思われます)。

このように、契約トラブル対応では、当方の有利/不利な点を見定めるだけではなく、相手方の有利/不利な点を見定めることも重要になります。

4.必要な書類/証拠を補充する

前述した通り、弁護士に相談に来られた企業担当者の方が、こちらに有利な書類や相手方に不利な書類を全て揃えておられることはむしろ少ないため、1~3の作業を終えた後は、必要な書類/証拠を補充することになります。

例えば、契約書がないのであれば契約書を相手方から貰う(それが無理であれば、メールやFAXなど、代替のものを揃える)等です。弁護士が交渉等に入ると入手できなくなる書類や証拠も少なくないため(※官公庁や関係機関・会社への弁護士照会など、弁護士が交渉等に入ることで入手できる書類や証拠もあります)、この作業は、とても重要なものになります。

もちろん、前提として、どの書類/証拠が重要で何が足りていないかを適切に把握している必要があります。

5.相手方の立場を考える

法的紛争の発展を見越した対応を考える上でも、相手方の立場を全く無視して良いわけではありません。相手方との取引が今後も継続する場合はもちろん、そうでない場合も、自社の利益ばかりに目を奪われると、紛争が解決しないばかりか、かえって自社の損害が大きくなる場合があります。例えば、仮にこちら側に有利な証拠が100%そろっていても、相手方が倒産して全く回収できなくなっては元も子もありませんし、こちら側にも不利な点等があるにもかかわらず、こちらの主張を全て通すことに拘りすぎると、かえって損失が拡大してしまうこともあります。

大切なのは、発生した契約トラブルの全体的・俯瞰的なバランスを見定めることを忘れないことです。