第一の判断の分かれ目としては、不具合の程度や外部から見た認識しやすさであり、不具合の程度が軽いものや外部から認識しにくいものは認識可能性が否定され易い傾向にあります。

東京地裁平成14年2月22日判決は、問題となった「変圧器付き電柱」が建物の前面に位置していた案件で、「(売主は)建物を販売する者として、当然これを知りうる立場にあったのであるから、その存在を知らなかったからといって、この義務を免れるものではない」として、売主の説明義務(違反)を肯定しました。

東京地裁平成13年9月26日判決は、「不動産の売主は、地盤沈下問題の重要性は容易に認識できた」として、売主の説明義務(違反)を肯定しました。

他方で、東京地裁平成16年6月4日判決は、「売主が物件近くの葬儀場の建築計画を知り得たとは認められない」として、売主の説明義務を否定しました。

また当職が過去扱った建築紛争事例のうち地盤沈下事例では、売主(素人)のみならず、下見に来た買主や仲介業者もすぐに建物の不同沈下に気が付かなかった事例で、裁判所は売主の認識可能性を否定いたしました。

このように、不具合の程度や外部からの認識しやすさ等によって判断が変わり得ますので、注意が必要です。

第二の判断の分かれ目は、売主が素人かで、素人であれば認識可能性は肯定されにくく、業者であれば認識可能性は肯定されやすい傾向にあります。

その他裁判例や私の経験を踏まえて私見を申し上げると、ご相談内容からすると、雨漏りの原因となった不具合の程度は相当酷いようであり、酷い「雨漏り」の発見(の可否)は、場所次第では素人か業者かで大きく変わるようなものでもありません。

今回の雨漏りが台所という日常的に使用する部位であることからすると、売主が一般人であることを考慮しても、5年前の雨漏りの補修以降、当該建物へほとんど訪れていなかった等という事情があれば別論、継続的に当該建物に出入りしていた(ないし居住していた)というのであれば、「故意」は兎も角、「認識可能性」まで否定されてしまうのには違和感を覚えます。

即断は出来ませんが、「認識可能性」が認められる余地(可能性)はあるように思われます。

(続く)