成年後見の手続きの概要
成年後見の手続きの概要について解説いたします。
成年後見が開始される場合 | 成年後見の開始に必要な手続き
成年後見開始後の流れ | 成年後見人の報酬
1.成年後見が開始される場合
成年後見は、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある」場合に開始されます。
具体例は、次のような方です。
- ・通常は、日常の買い物も自分ですることができない(誰かに代わってやってもらう必要がある)
- ・家族の名前、自分の居場所など、ごく日常的な事柄がわからなくなっている
- ・植物状態にある
2.成年後見を開始するにはどのような手続きが必要でしょうか
成年後見の開始には、家庭裁判所による手続きが必要です。家庭裁判所により、「成年後見開始の審判」が行われます。
だれが「成年後見開始の審判」の申請することができるのか
本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長などが申請することができます。(本人は、「事理を弁識する能力を欠く常況」にあったとしても、一時的に意思能力を回復したような場合に申立てをすることができます。)
市町村長が申立をすることができるのは、本人に配偶者や親族がいない場合や、音信不通の状態である等の場合が考えられるからです。
どこの家庭裁判所に申請できるのか
成年後見の手続きは、本人の住所地の家庭裁判所で行われます。多くの場合は、本人の住民票がある場所の家庭裁判所ということになるでしょう。大阪府であれば、以下のとおりです。
ア.大阪家庭裁判所(本庁)の管轄
池田市 箕面市 豊能郡 豊中市 吹田市 茨木市 高槻市 三島郡 東大阪市 八尾市 枚方市 守口市 寝屋川市 大東市 門真市 四条畷市 交野市 摂津市
イ.大阪家庭裁判所・堺支部の管轄
ウ.大阪家庭裁判所・岸和田支部の管轄
家庭裁判所での手続き
ア.原則として医師等による鑑定が必要となります。 本人に事理弁識能力を欠く常況にあるか否かを判断するためです。 ただし、植物状態であると医師が診断している場合や、近接した時期に別件で本人の精神状況についての鑑定が行われている場合には、鑑定は不要とされています。それらの診断書により、事理弁識能力を欠く常況であると判断できるからです。
また、実務上は、申立時に診断書を提出し、その診断書の記載等から明らかに安定の必要がないと認めるときは、鑑定が不要とされています。診断書の書式については、成年後見制度における診断書作成の手引(PDF:1.1MB)をご覧ください。
イ.成年後見開始のためには原則として本人の意見を聴かなければならないとされています。 例外は、本人の心身の障害により意見を聴くことができない場合です。(家事事件手続き法119条)
成年後見開始の審判がされた後の流れ
家庭裁判所が、本人が事理弁識能力を欠く常況であると認めたときには後見開始の審判を行います。この審判は、申立人だけでなく、本人に対しても通知されます。成年後見開始の審判に不服がある場合には、即時抗告をして、これを争うことができます。
成年後見開始の審判が確定すると、裁判所書記官の嘱託により登記官が、後見登記法による登記を行います。ただし、戸籍へは記載されません。
成年後見開始の審判の費用負担について
成年後見開始の審判の費用は、申立人が負担します。後見開始審判の手続き上、医師等による鑑定が必要ですが、その費用を負担しなければなりません。
もっとも、先にも触れましたが、診断書の記載により鑑定が不要とされる場合が多く、家庭裁判所において実際に鑑定が行われているのは申立のうち10%程度です。また、鑑定の費用は、5万円以下が67%(10万円以下を含めると97%)を占めています(平成25年度)。
市町村長の申立の場合には、家庭裁判所が本人に費用負担を命じることができるとされています。
3.成年後見開始の審判が出た後の流れ(成年後見人選任)
成年後見開始の審判があると、本人は「成年被後見人」となるので、家庭裁判所は職権で成年後見人を選任します。
配偶者が当然に後見人となる制度は廃止されました。現在では複数の成年後見人や、法人が成年後見人となることが認められるようになりました。本人(成年被後見人)の家族が選任されることもありますが、専門職(弁護士など)が選任されることもあります。
4.成年後見人の報酬について
成年後見人は、報酬を請求することができます。家庭裁判所に対して、「報酬付与の審判」を申立てる必要があります。専門職だけでなく、親族が成年後見人となる場合にも報酬を請求することができます。
報酬額は、家庭裁判所の決定によります。この報酬は、本人の財産から受け取ることになります。