(1)取締役の欠格事由

会社法には、取締役の欠格事由が定められています(会社法331条)。

以下のいずれかにあたる場合には、取締役になることができません。

《取締役の欠格事由》
  • ①法人
  • ②成年被後見人、被保佐人(外国の法令上これらと同様に取り扱われている者を含む)
  • ③会社法違反の罪やその他一定の罪を犯し、その刑の執行後、または執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  • ④禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(執行猶予中の者を除く。)
  • ③に該当する罪は、会社法規定の罪のほか、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律違反の罪、金融商品取引法違反の一定の罪(有価証券報告書虚偽記載罪等の不実記載等の罪、不正取引・相場操縦・インサイダー取引規制違反の罪等)、破産法・民事再生法・会社更生法等の各種倒産法違反の一定の罪(詐欺破産(再生・更生)罪等)が該当します。

これらが取締役の欠格事由とされる趣旨は、会社法秩序を破った者は取締役にはふさわしくないという点にあります。この場合、罰金刑や執行猶予中の者も欠格事由にあたる点や、実刑になって刑の執行が終わってから2年を経過しない者も欠格事由にあたる点が、④とは異なります。

なお、旧商法では、破産手続開始決定を受け復権しない者も欠格事由とされていましたが、会社法では欠格事由から除外されています。したがって、過去に破産手続開始決定を受けていても、株主総会で選任されれば取締役に就任することは可能です。

もっとも、既に取締役の地位にあった者が破産手続開始決定を受けた場合、いったん取締役の地位を喪失しますので(民法653条2号)、取締役に戻るためには、再度株主総会によって選任される必要があります。

(2)定款による資格制限

取締役の条件として株主であることを定款で定めることができるかについては、公開会社についてはできませんが、非公開会社であれば可能です(会社法331条2項)。

では、取締役の資格条件として株主であること以外の条件を定款で定めることができるかについては、各会社の具体的事情に応じ不合理な内容でない限り許されます。例えば、年齢(定年制)、住所(本店所在地の居住者に限る)等による資格制限は、合理的な内容の制限として適法と考えられるでしょう。さらに、上記の会社法331条2項の規定からすると、非公開会社の場合、公開会社に比べて、定款による取締役の資格制限がより広く認められると思われます。