事例紹介
不動産契約に関しての、ローン事務手数料についての質問

大阪府の不動産業者を仲介して、新築物件の契約をした者です。業者に支払うローン事務手数料について教えて下さい。
新築物件の購入の際、業者の紹介で住宅ローンを利用したのですが、業者から貰った重要事項説明書には、ローン事務手数料の欄はあるものの、金額の記載はなく、また、料金が発生する旨の事前の説明もありませんでした。
ところが、先日、業者から、住宅ローン事務手数料として、108,000円を支払って欲しいと言われました。
「事前に説明しました。」と言われましたが、改めて思い起こしても、私も妻も業者に支払うローン事務手数料108,000円については説明を受けた記憶がありません。
業者が言うには、「何処でもこの金額はとっているし、いままでも当方の様にゴネてる人からも確実に徴収してます。お客様の場合、金利優遇がいいのでローン事務手数料を払っても、かなりお得ですよ。」と言われました。
確かに、金利の良いローンを紹介して貰ったのには感謝していますが、いきなり出てきたローン事務手数料にはやはり納得がいきません。
重要事項説明書にて空欄となっているローン事務手数料について、絶対払わくてはならないのでしょうか?
A.ご相談者の方の支払義務は発生しにくいと思われます。
そもそもの出発点として、「ローン事務手数料の支払合意があったこと」の証明責任は、支払の請求を求める側(本件では業者側)にあります。
そして、「業者から貰った重要事項説明書には、ローン事務手数料の欄はあるものの、金額の記載はなく、また、料金が発生する旨の事前の説明もありませんでした。」
という事情からすると、特に業者側はローン事務手数料の支払は求めていなかった、と考えるのが素直であり、業者側が、ローン事務手数料の支払合意の成立を証明するのは容易ではないように思われます。
実際、当職が調査した限り、現在の不動産業界では、ローン事務手数料を請求する場合は、料金を事前に説明し了解をもらうのが一般的なようです。
それを踏まえると、支払合意があったことの証明はやはり難しく、ご相談者の方の支払義務は発生しにくいと思われます。
因みに、宅建業法35条(重要事項説明)1項12号には、以下の通り、規定されています。
これは、宅建業者の斡旋により金融機関の住宅ローンを利用する場合に、当該住宅ローンの内容と当該住宅ローンが得られなかった場合の措置について、予め明記することを求めた条文です。
ここでいう「当該住宅ローンの内容」に、ローン事務手数料が含まれるか否かは、議論が有り得るところですが、大阪府は、ローン事務手数料を明記しないで請求する場合は、重要事項説明書記載の不備として、下記の通り、指導・是正の対象としているようです。
http://www.pref.osaka.lg.jp/kenshin/jusetsu/index.html
業者側の「うっかりミス」の可能性は否定できませんが、業者の説明義務を重く捉える昨今の事情等を考慮すると、裁判ではなかなか主張として通りにくいように思われます。
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