会社に内部紛争が生じた場合、そもそも、会社の株主は一体誰であるのかが関係者間で争いになることがよくあります。

それが裁判にまで発展した場合は、株主としての権利を主張する者とそれを争う者との間で株主権確認請求訴訟が係属することになり、訴訟手続・判決を通じて、会社の真の株主が誰であるかを確定していくことになります。

建前論でいえば、「株主名簿を見れば済む話ではないか」ということになりますが、現実問題として、株主名簿をきちんと作成・管理している中小企業は決して多くないという実態があります。

会社に株主名簿が存在しない場合、決算書に添付されている同族会社等の判定に関する明細書や、会社設立時に作成・提出する株式引受人の記載、同引受人からの株式譲渡契約書の有無、等、まずは客観的書類に「株主」として記載されたものから判断していくことになるのですが、ことはそう単純ではありません。

同族会社等判定明細書や株式引受書の株主の記載は、相続税対策などで子どもたちなどの親族や友人・知人などの他人に名義を貸して貰っている、会社設立時からすでに5年以上が経過しているために法務局に行っても発起人の株式引受書等の申請時の添付書類がすでに廃棄されている(※法務局での保存期間は5年間)、など、客観的書類に記載された「株主」が真の株主であるのか疑わしい事情が出て来たり、客観的書類そのものが既に散逸してしまっているケースがよくあるからです。

最高裁第二小法廷昭和42年11月17日判決(判例タイムズ215号101頁)は、新株発行において、他人の承諾を得てその名義を用いて株式の引受がなされ、名義貸与者と名義借用者のいずれが株主になるかが争われた事案において、真の株主は名義人(名義貸与者)ではなく実際に払い込み・対価の提供を行った行為者(名義借用者)であると判断いたしました。

このように、客観的書類のみから真の株主が判定できない場合、(株主総会が開催されていれば)株主総会における議決権の行使状況や、㈱の利益配当金の受取り状況、株式取得資金の実際の拠出状況、名義貸与者と名義借用者との関係や名義貸与の合理性などから総合的に判断していくことになります。

仮に会社に株主名簿が存在する場合でも、同じ理由により、誰が真の株主であるかを容易には確定できないケースもあります。