事例・コラム
取締役の責任〜利益相反取引〜
利益相反取引が行われた場合は…
取引の効力
承認のない利益相反取引については、会社は直接取引の相手方に無効を主張することが出来ます。しかし、間接取引については、会社が承認のない利益相反取引の無効を主張するには、契約の相手方が、当該取引が利益相反取引であること、及び、同取引に取締役会の承認がなかったという事実を知っていたことを証明しなければならないとされています(最判昭和43年12月25日)。また、取引相手である取締役や、間接取引の相手方からの会社に対する無効主張は許されないとされています。
取締役の責任
利益相反取引が行われ、それによって会社に損害が生じた場合は、承認の有無にかかわりなく、利益相反に関係した取締役は損害を賠償する責任を負うことがあります(会社法423条3項)。
利益相反取引を行った取締役(会社法423条3項1号)はもちろん、代表取締役や業務の執行をした取締役(会社法423条3項2号)も対象となります。取締役会設置会社においては、取締役会での承認決議に賛成した取締役も対象となっています(会社法423条3項3号)。
また、自己のために直接取引をした取締役は、自らに落ち度がないことを証明したとしても免責されませんし、責任の一部免除などもできません(会社法428条)。
まとめ
今回紹介したように、利益相反取引は会社に損害が生じやすく、会社の承認の有無にかかわらず、取締役もその責任を逃れにくいという特徴があります。一方で利益相反取引にあたるかどうかの判断は容易ではありません。取締役や取締役が関与する相手方と取引を行う際には、「利益相反取引にあたらないか」という視点で、慎重な対応を図ることが大切です。