事例・コラム
株主総会決議の不存在、無効、取り消し
(2)株主総会の決議について、特別利害関係を有する者が議決権を行使し、これによって著しく不当な決議がされた場合
「特別利害関係を有する者」とは「当該決議の成立によって、他の株主と相いれない利益を得、または義務を免れる者」と定義されています。分かり易くいえば、決議の成立によって、自分だけ得をする者のことです。
この者が得をすることで、許容性の限界を超えた不当な決議がなされる場合があり、会社法は、本規定を置くことで決議の公正さが維持されることを事後的に担保しています。
(3)株主総会決議取消の訴えの提起方法と効果
総会決議取消の訴えを提起できる者および期間は、限定されています。提起できる者は、株主、取締役、執行役、監査役、清算人です。
期間は、決議のあった日から3か月以内です。期間が限定されている理由は、早期に決議の効力を確定して、法的安定性を確保するためです。効果は、対世効を有し、かつ遡及効を有しています。
(4)裁量棄却(831条2項)
総会決議取消の訴えに特殊なものとして「裁量棄却」があります。株主総会の招集手続きまたは決議の方法が法令、定款に違反する場合でも、違反が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさない場合であれば、取消事由がある場合でも、裁判所の判断で、訴えを棄却(退けること)することができます。
たとえば、株主Aへの招集手続きがなされませんでした。これは、法令違反です。しかし、Aは総会があることを知り、実際に総会に出席し、かつ決議にも参加しました。このような場合には、Aは株主総会に参加し、決議もできているのですから、違反は重大でなく、決議に影響を及ぼさない場合であるとして、裁量棄却がされることとなります。