Q. 下請会社の一つです。私たち下請会社らが労働組合や団体等を結成し、元請と団体交渉等をしていくことは可能でしょうか。

元請と下請との関係について質問させてください。

大阪府内に、電気設備メンテナンスを主とする大きな元請会社がありまして、当社はそこから仕事を貰っている数社ある下請会社の一つです。

元請から、一方的な報酬額の減額(ひどいときには半額程度の減額)や、元請からの仕事がない日でも他の仕事をしてはならないという取り決め(待機による保証等も一切なし)等に悩まされております。
今まで下請会社同士での組合や団体等も作っておらず、元請からの要望を交渉の機会なく押し付けられてきましたが、私たち下請会社らが労働組合や団体等を結成し、元請と団体交渉等をしていくことは可能でしょうか。

労働組合というのは、対元請に対して下請業者らが結成できるものなのでしょうか。

A. 下請会社らが労働組合を結成することができませんが、下請会社が集まって、元請会社と交渉を求めることは可能です。

1.下請会社らが労働組合を結成することができない

労働組合法上の「労働組合」は、労働者が主体となって組織するものでなければなりません(労働組合法2条)。そのため、下請会社が労働組合を結成することはできません。

2.下請会社が集まって、元請会社と交渉を求めることは可能

下請会社が、元請会社に対して、共同して交渉を求めることについて法的制約はありません。

もっとも、労働組合が使用者に対して団体交渉を求める場合には、交渉事項によっては使用者は団交応諾義務があるので拒否することができないのと異なり、本件において、元請会社が交渉に応じる法的な義務はありませんので、交渉を拒否される可能性はあります。

ただし、後記の通り、下請会社が公正取引委員会に通報することを嫌って、元請会社が交渉のテーブルに付く場合もあります。

3.元請会社の行為は法的に問題がないのか

(1)民法上の問題

元請会社からの一方的な報酬額の減額についてですが、民法上、一度双方で取り決めた報酬額を一方的に変更することはできません。そのため、当初取り決めた報酬額を請求することができます。

支払われていない金額(減額分)について、遅延利息も加えて請求することができます。

(2)独占禁止法上の問題

元請会社からの一方的な報酬額の減額は、独占禁止法が禁止する「優越的地位の濫用」に該当する可能性があります(独禁法2条9号5項)。

独禁法2条9項5号は、「自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引する」行為を不公正な取引方法の一類型として規定しています。

これに基づいて指定された不公正な取引方法の一般指定14項は、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のような行為を行うことを禁止しています。

  • ① 継続して取引する相手方に対し、当該取引に係る商品または役務以外の商品または役務を購入させること(百貨店である三越が納入業者に対して行った押しつけ販売が問題とされた事例、金融機関による両建て預金の押しつけが問題とされた事例等があります)
  • ② 継続して取引する相手方に対し、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること(大手コンビニ業者が納入業者に対して「1円納入」を要請し在庫処分費用約13億円を負担させた行為と仕入れ割戻金を要請した行為が、経済上の利益を提供させるに該当するとされた事例、市況対策費と称する金銭を取引先段ボール箱製造業者に負担させたことが問題とされた事例等があります)
  • ③ 相手方に不利益となるように取引条件を設定し、または変更すること(押し込み販売、メーカーによる払込制(メーカーが販売業者に自己の販売政策に従わせるために、売買差益の全部または一部を徴収・保管し、一定期間経過後に払い戻すこと、買いたたき等がこれに該当します)
  • ④ 以上の行為のほか、取引の条件または実施について相手方に不利益を与えること(大規模小売業者等が、納入業者に多頻度小口配送を要請し、これにより納入費用が大幅に増加するため納入業者が納入額の引き上げをもとめたにもかかわらず、十分な協議のないまま一方的に納入単価を決めて納入させているような場合)
  • ⑤ 取引の相手方である会社に対し、当該会社の役員の選任についてあらかじめ自己の指示に従わせ、または自己の承認を受けさせること(金融機関が融資先会社の役員選任に干渉し、その範囲も社長以下常務取締役全員に及ぶことから違法とされた事例等があります)

御社が、元請先より受けた行為は、一方的な報酬減額とのことですので、ご相談内容から判断させていただく限り、上記③に該当する印象を受けます。(該当すれば、当然、違法です)

(3)下請法上の問題

元請会社による報酬額の一方的な減額は、独禁法の特別法である「下請法」にも抵触する可能性があります。

下請法は、①製造委託、②修理委託、③情報成果物作成委託、④役務提供委託の取引が対象となります。本件においては、メンテナンスなので、④に該当すると想われます。

④役務提供委託の取引の場合、資本金5000万円超の事業者が資本金5000万円以下の事業者(や個人)と行う取引と、資本金1000万円超5000万円以下の事業者が資本金1000万円以下の事業者(や個人)と行う取引に適用されます。

下請法は、元請会社(下請法では「親事業者」といいます)に対して、受領拒否、下請代金の支払い遅延、下請代金の減額、返品、買い叩き、物の購入強制・役務の利用強制、報復措置、有償支給原材料等の対価の早期決済、割引困難な手形の交付、不当な経済上の利益の提供要請、不当なやり直しを禁止しています(下請法4条)。

また、親事業者は、①下請会社の給付内容、給付受領期日・場所、下請代金の額・支払期日・支払い方法等に係る事項等を記載した注文書を交付し、②取引に関する書類を作成してこれを2年間保存し、③発注時に支払期日を定め、④支払期日までに下請代金を支払わない場合には遅延利息(年率14.6%)を支払う義務を負います(下請法2条、3条、4条の2、5条)。

本件で、下請法が適用される場合(元請会社と下請会社の資本金によります)には、減額された報酬について、未払額及びそれについての遅延利息(年利14.6%)を請求することができます(下請法が適用されない場合には、遅延利息は年利6%になります)。

(4)まとめ

以上、諸々の観点から、元請会社の行為は、法的に大いに問題があると思われます。

なお、元請会社からの仕事がない日でも他の仕事はしてはならないという取り決めがあるということですが、これも、独占禁止法が禁止する「優越的地位の濫用」に該当する
可能性があると思われます(独禁法2条9号5項ハ「取引に相手方に不利益となるように取引の条件を設定すること」、同19条)。

4 具体的にどのような対処法があるのか

(1)公正取引委員会による是正措置

本件のような下請会社に対する違法行為が疑われる場合、公正取引委員会は、是正のための様々な措置権限を有しています。

まず、下請法との関係で言えば、親事業者の禁止事項への違反が明らかとなったときは、公正取引委員会が、親事業者に対し、その改善を求める勧告を行うことができます。

具体的には、減額の場合は減額分の支払いをすることを勧告することに加えて、再発防止措置も勧告することができます。

公正取引委員会は、勧告をしたときは親事業者名を含む事件の概要を原則として公開しています。
ホームページで公開されており、一般人も閲覧することができます。
http://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukekankoku/

下請法違反があるかどうかの判断にあたっては、公正取引委員会が親事業者の事務所に立入検査する場合もあります(下請法9条)ので、その点からも、公正取引委員会の措置は、事実上の抑制効果を期待できます。

同種の措置権限は、独禁法にも規定されいるため、元請会社の行為が「優越的地位の濫用」に該当すると判断される場合、同法違反として同種の措置が取られる場合もあります。

(2) 公正取引委員会への通報

下請法や独禁法の違反が疑われる場合、報告(通報)することができます。これは一般人でも可能です。窓口は、全国9カ所の事務所に設けられています。

大阪であれば、

近畿中国四国事務所
(大阪市中央区大手前4-1-76大阪合同庁舎第4号館所在。
 下請課:電話06-6941-2176)

があります。

詳しくは、公正取引委員会のホームページに掲載されています。
http://www.jftc.go.jp/shitauke/madoguti.html

書面で具体的な事実を適示して行った報告に限っては、措置をとった場合、措置をとらないこととした場合、公正取引委員会は速やかにその旨を当該報告者に通知しなければならないと決められています。
そのため、通報に際しては、書面で行った方が、公正取引委員会の具体的なアクションが期待できます。同書面を、弁護士を代理人として作成、提出することも可能です。

(3)報復措置の防止施策

下請会社が、公正取引委員会に通報するに際して、一番気になるのは、元請会社からの報復措置であると思われます。この点に関し、元請会社からの報復措置を防ぐために、様々な防止施策が講じられています。

ア. 下請法による報復措置の禁止

下請事業者が公取委または中小企業庁長官に親事業者の44条違反行為を通報したことを理由として取引数量の減少、取引停止その他不利益な取扱をすることは、禁止されています(下請法4条1項7号)。

イ. 通達による情報源秘匿の配慮

下請事業者による公取委への通報は、直接には、公益通報者保護法の対象ではありません(同法は、従業員等による内部通報を対象にしているため)。もっとも、公益通報者保護法の理念に配慮し、公正取引委員会は、下請事業者による公取委への通報について、公益通報者保護法と同等の事務処理を行う通達がなされております。
http://www.jftc.go.jp/soudan/madoguchi/kouekitsuhou/shoriyokou.html

したがって、通報者の氏名等が、公正取引委員会から漏れることはありませんので、この点からも、報復措置の防止を期待することができます。

ウ. 民法上の賠償責任

元請事業者の報復措置が、個別契約もしくは基本取引契約に違反するような場合は、当然、民法上の賠償責任が発生いたします。

(4)交渉

以上の通り、元請会社には、交渉の場につく法的義務はありませんが、下請会社らには、公正取引委員会への通報(と是正措置)という手段が残されているため、これを嫌って、元請会社が交渉のテーブルに付く場合もあります。

一社で交渉するよりは、数社で集まって交渉する方が良いことは言を待ちませんので、まずは、下請会社で集まって元請会社と交渉をされるのも一つの方法です。

その上で、交渉では解決ができないときには、公正取引委員会に報告(通報)することも選択肢の一つでしょう。順番としては、先に公正取引委員会に報告(通報)した上で、公正取引委員会の調査と並行して交渉を進めることも可能と思われます。

どちらの場合が良いかは、ケースバイケースと思われます。

(5)裁判

公正取引委員会への通報の有無にかかわらず、元請会社に対して、差額分請求の裁判を起こすことも勿論可能です。

5 まとめ

以上の通りです。

交渉・通報・裁判の一連の経過について、弁護士が関与または代理することも可能ですので、具体的な対応を考えられるのであれば、改めてご相談下さい。