Q. 不貞行為の慰謝料の金額が高く感じるのですが、金額は妥当ですか。

私は27歳、女性です。同じ職場の上司と不貞行為をしてしまいました。

上司が結婚をしていたのは知っていましたが、「査定で上手く便宜を図るから」といわれ、ついつい身体を許してしまいました。

期間は平成23年の1月から3月の2月間で、回数は3回です。その後、関係はなかったのですが、同じ年の6月に奥さんの代理人の弁護士から、慰謝料300万円を払うように、という、内容の通知が届きました。

謝罪の意味を込め、必要であれば仕事を辞めるとの内容も含めた謝罪文を送り、30万円~50万円までの減額と分割払いをお願いしましたが、相手の弁護士側からは、「240万円を一括で。」という回答でした。

その後、本人から直接電話があったり、相手の弁護士事務所に行ったりして、話合いを続けました。

先方の意向に応じて、仕事も辞めたのですが、金額が折り合いません。
慰謝料300万円は、どうしても高額な印象を受けるのですが、私は、300万円を支払わなければいけないのでしょうか。

なお、元上司と奥さんは、現在でも婚姻関係を継続していますが、元上司は、私以外の女性とも、不貞行為を行っていたようです(人数は不明)。

A. 300万円は相当高額と思われます。

不貞行為の慰謝料の金額の考慮要素は様々ですが、札幌地裁判決(昭和51年12月27日)の事案では、

「(前夫)の女ぐせの悪さは結婚当初からのもので、今日まで何人もの女性と不貞な関係を続けてきたこと、また(前夫)は(妻)に対して度々殴る蹴るの乱暴をしたこと・・・(前夫)は、(浮気相手)との不貞な関係の招来およびその維持について常に主導権を握っており、(浮気相手)はただこれに服従したに過ぎないともみられること、少なくとも現在は、(浮気相手)は(前夫)と別れ・・・たこと・・・」

等を理由として、(妻)から(浮気相手)に対する慰謝料請求を10万円の限度でのみ認めました。

東京地裁判決(平成4年12月10日)の事案では、

「婚姻関係の平穏は第一次的には配偶者相互間の守操義務、協力義務によって維持されるべきものであり、不貞についての主たる責任は配偶者にあるという
べきであって、不貞の相手方において優越的地位等の手段を用いて不貞配偶者の意思決定を拘束したような特別の事情の存在する場合を除き、不貞の相手方の
責任は副次的であると判示した上、・・・(夫)は職場において(浮気相手)の上役の地位にあったもので、不倫関係の発生及び継続については(夫)が
主導的役割を果たしていること、(夫)と(浮気相手)との間の不貞関係は解消されているところ、(妻)は(夫)に対しては宥恕(ゆうじょ:寛大な心で罪を許すこと)して不貞行為の責任を追及しておらず、(妻)と(夫)の夫婦関係は修復して婚姻関係の危機は乗り越えられていることなど、

(判例タイムズNo.870の解説より引用)

を理由として、(妻)の請求を50万円の限度で認容しました。

ご相談いただいた内容以外の細かな経緯にもよりますが、ご相談のケースでは、

  • ・「査定で上手く便宜を図るから」と持ちかけるなど、元上司が相当、積極的に不貞行為を誘引していること、
  • ・相談者は仕事を辞めており、既に一定の制裁を受けていること、
  • ・さらに、相手(元上司)が他にも不貞行為がある
    →仮に離婚していたとしても、相談者との関係のみが離婚の原因とはいえないこと
  • ・回数が少なく(3回)、期間が短い(2か月)

等からすると、300万円の慰謝料は相当高額と思われます。

個人的には、低ければ10万円、高くとも100万円には及ばないという印象を受けます。