Q. 訴訟の過程で、当該仲介業者が説明義務を果たしていないのではないかと思われる事情が発覚したのですが、仲介業者の説明義務違反は問えないのでしょうか。また、今後どのように対応していけばよいのか、教えて下さい。

大阪市の不動産業者の仲介により、中古住宅の売買契約を行いました(買主です)。
じつは、この中古住宅の売買で、売主が知っていながら説明しなかった瑕疵が存在していました。
ベランダ外壁サイディングの破損を応急処置していた事実(原因は内部木部が雨水浸入によりすべて腐蝕していたことによる)を、売主が売買契約前に告知せず、物件引き渡しからおよそ1年後までの間に再び破損が生じたというものです。

その損害賠償請求訴訟を行い、最終的には売主が過失を認めて和解(半額支払い)に至りました。

ところで、上記訴訟の過程で、当該仲介業者が説明義務を果たしていないのではないかと思われる事情が発覚いたしました。
上記訴訟に際して提出された被告(売主)側の答弁書に「内覧会に原告(買主である私)より先に来られた別の方を案内された、被告(売主)担当の不動産業者の営業担当者が、この方と共にこの補修について見ていかれました」「仲介業者は応急処置を予め知っていました」と書かれていたのです。

売主の答弁書の記載が事実であるとすると、仲介業者には説明義務違反があるように思えます。そこで、私から不動産業者に対し、早急に納得できる事情の説明をしていただけるよう求めました。
しかし、不動産業者からは「事実確認の結果、弊社担当者が建物に瑕疵があることを知っていたにもかかわらず買主様に説明しなかったという事実は確認できませんでした」という回答しかありませんでした(すなわち、営業担当者に聞いたらそんなことはありませんでした。売主の答弁のことは知りません、という意味の返答)。

今回の事案で、仲介業者の説明義務違反は問えないのでしょうか。今後どのように対応していけばよいのか、教えて下さい。

A. 仲介業者である不動産業者の説明義務違反が成立する可能性はありますが、まずは売主に確認するのが本筋です。また、調査の結果、どうするかは相談者次第です。

1 仲介業者である不動産業者の説明義務違反が成立する可能性はある

仲介業者は、宅建業法35条に例示列挙された事項に限らず、一般的に取引当事者(になろうとする者)が不動産取引を行うか否かの意思決定を行う上で重要な要素となる事項について、説明義務を負うと解されています(東京地裁平成13年6月27日判決、大阪地裁平成15年11月26日判決等)。

「ベランダ外壁サイディングの破損を応急処置していた事実(原因は内部木部が雨水浸入によりすべて腐蝕していたことによる)により、物件引き渡しからおよそ1年後までの間に再び破損が生じた」
というのを予め分かっていれば、買主は、補修費用等を売買代金に反映させるのが通常ないし合理的と思われます。

そして、売買代金額が意思決定の際の重要な要素であることは言を待ちませんので、特に仲介業者である不動産業者が当該事実を知っていたのであれば、買主に対する説明義務(違反)の内容となると思われます。

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