事例・コラム
父親の遺産を分割・相続したいのですが遺産分割協議をどのように進めていけばよいでしょうか。
Q. 父親が他界しました。遺産分割協議をどのように進めていけばよいでしょうか。
父親が他界して1年が経ち、父親の残した遺産を分ける話をしています。母から聞いた話によると、父には前妻との間に子供がいるそうですが、1度も会ったことがなく、連絡先も知りません。父の遺産には自宅および預貯金が判明していますが、他に財産があるかは分かりません。また、母も私も遺産分割の経験がなく、どこから手をつければいいのかも分かりません。
遺産分割協議をどのように進めていけばよいでしょうか。
A. 遺産分割協議を進めるにあたっては、1.相続人の確定、2.相続財産の調査、3.遺産分割協議という流れになります。
1.相続人の確定について
相続人は、戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本、住民票等により把握します。ご相談の事例のように、相続人の1人と面識がない場合であっても、被相続人の戸籍をたどることで、多くの場合、誰が相続人かが判明します。
2.相続財産の調査について
相続財産を調査し、遺産の範囲を確定します。
具体的な調査方法としては、不動産登記簿、預貯金の残高証明書などの証明書、被相続人の税の申告書などを端緒として調査することになります。
被相続人が有していた預貯金の口座番号が分からない場合であっても、例えば、郵便局は貯金の残存照会の手続きをすることによって、被相続人名義の口座の存在を把握することが可能です。
手続に必要な書類は、ア.被相続人が死亡したことが分かる書類(死亡診断書又は除籍謄本)、イ.請求者が相続人であることが分かる書類(戸籍謄本、改製原戸籍謄本)です。
戸籍謄本等の原本は返却してもらえるので、何度も戸籍謄本等を取得しなくても大丈夫です。
3.遺産分割協議について
協議による分割とは、共同相続人の合意により遺産を分割する手続です。
共同相続人全員の意思の合致がある限り、分割の内容は共同相続人が自由に決めることができ、分割の態様についても、不動産を売却し、売却代金を分割することや、ある相続人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払うなど自由な方法が採れます。
遺産分割に関して共同相続人間で合意が成立した場合、口頭の合意であっても有効ですが、協議の内容を証明するため及び後日の紛争を防止するためにも遺産分割協議書を作成することをお勧めします。本件のように、遺産の中に不動産がある場合、共同相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書をそれぞれ添付すれば、遺産分割協議書によって登記の名義を変更することが可能となります。
相続人全員が記載内容を承認して署名・押印すれば遺産分割協議は成立します。
遺産分割協議を作成する際には、誰がどの遺産を取得するのか明記すること、現在判明していない相続財産が今後発見された場合、誰に分配するのか記載すること等に注意が必要です。
共同相続人間で話がまとまらないときや協議ができないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申立て、中立公正な調停委員に間に入ってもらい、話し合いによる解決を図ります。
遺産分割調停が不調に終わった場合、審判手続きに移行します。
審判分割においては、審判手続きで必要な審理が行われた後、家庭裁判所の審判官の審判により結論が示されることになります。