顧問先・依頼者・受任中の事件・過去の取扱事件の広告の原則禁止

守秘義務等の観点から、顧問先・依頼者・受任中の事件・過去の取扱事件の広告は原則として禁止されており、例外として、依頼者の書面による同意がある場合や、依頼者が特定されずに依頼者の利益を損なうおそれがない場合などにのみ許容されている。

弁護士としての職務の性質を考えると、掲載する場合は、依頼者や元依頼者の同意、あるいは依頼者が特定されずに依頼者の利益を損なうおそれがない場合であることなどは当然の前提であろう。これに関連し、依頼者や元依頼者によるアンケート広告について、ホームページ業者から何度か打診があり、その度に私も悩んでいるが、結局、採用しないまま、今に至っている。

「依頼者や元依頼者がOKなのだから、それで良いじゃないか。」と言われればそれまでであるが、アンケート広告を採用すると、システム上、それを望まない依頼者や元依頼者に対しても、広告の可否を質問していかざるを得ず、そのような依頼者や元依頼者との間の信頼関係にひびが入るのではないか、と思うと、どうしても躊躇してしまう。

面識のない者への訪問・電話・メール広告の原則禁止

弁護士は、面識のない者への訪問・電話広告が原則禁止されている(弁護士業務広告規程5条)。ただし、法律事務の依頼を希望する者から請求があった場合などは例外的に許容されている。

面識のない者への特定の事件の直接勧誘広告の原則禁止

弁護士は、特定の事件の当事者及び利害関係者で面識のない者に対して、郵便またはその他これらの者を名宛人として直接到達する方法で、当該事件の依頼を勧誘する広告をすることを原則として禁止されている(弁護士業務広告規程6条)。

ただし、公益上の必要があるとして所属弁護士会の承認を得た場合についてはこの限りではない、とされている。ちょっとアメリカの弁護士の行動を揶揄する言葉として「アンビュランス・チェイサー」(弁護士が救急車の後を追って病院まで行き、 救急患者に「訴訟で損害賠償を請求しましょう」と勧誘する様子)という用語があるが、こうした行為は日本の弁護士では明確に禁止されている。

以上の通り、今回弁護士業務広告規程などを見直した際に、気になった条文等を思うままに列挙した。実際には、これ以外にも様々な制約があるものの、当初弁護士になった理念を忘れさえしなければ、遵守できると思われるものがほとんどである。

弁護士増員に伴う弁護士業界の競争激化が言われて久しいし、「同業というのは、所詮、商売敵」とスッパリ宣言する弁護士も中にいる。私自身、法律相談を受ける際に、「別の弁護士にも相談中」と言われることは少なからずあり、同業内の競争を意識しないといけないのは時代の流れであろう。

ただ、競争を意識する余りに足元が疎かになって、思わぬ自体にならないように心懸けたい。