弁護士コラム
「自白への誘惑と弁護士の対応」(弁護士中村真二)
犯罪を否認する依頼者との問答や裏付け調査を繰り返す中で、依頼者の方から、「(犯罪を)やったことにした方が良いんでしょうか。」等と言われることもあります。
上記のような質問をされた際、たいていの場合、まず最初に、私が依頼者にお伝えする言葉があります。
「やっているか、やっていないか、あなた自身は、どう考えておられるんですか。」
当時酔っぱらっていた、等、本人も、真実をはっきりと分かりかねているケースは確かにあります。
そのような場合は別ですが、犯罪の成否を争う場合、ほかならぬ依頼者ご自身に、ご自分のことを信用していただく必要があります。弁護士は、あくまで依頼者をサポートする立場に過ぎません。
厳しい言葉であることは重々承知しておりますが、そこの点は、弁護士としては超えてはいけない一線であると、私は考えています。
私の経験上、本当に犯罪をやっていない(少なくとも弁護士の目から見て、そう思える)依頼者の方は、ここで、「自分を信じる気持ち」を取り戻していただくケースがほとんどです。一方、本当は犯罪をやっていた、という依頼者の方は、「すいません、本当はやりました。」と素直に教えていただけるケースが多いです。