事例紹介

2年以上前の残業代を請求できますか。

Q. 昨年、会社をうつ病を理由に退職しました。在職中、長時間残業をしましたが、残業代が支払われたことはありません。会社に対し残業代を請求しようと考えているのですが、2年以上前の残業代を請求することは可能でしょうか。 また、在職中うつ病を発症し、現在、仕事ができない状態です。会社に対して慰謝料請求も考えていますが、仕事が原因でうつ病を発症したことを証明する証拠としてどのようなものがあるでしょうか。

A. 具体的事情によっては、不法行為責任に基づいて残業代を請求することが可能です。

1.不法行為責任に基づき残業代を請求することの可否

残業代を会社に請求する場合、雇用契約に基づいて会社に残業代を請求することが大半です。雇用契約に基づく残業代請求権は労働基準法115条により2年間で時効により消滅します。

もっとも、雇用契約に基づいて残業代を請求することと不法行為に基づいて残業代相当の損害賠償を求めることは別個の根拠に基づくものですので、個々の要件を満たす限り請求することは理論的には可能です。裁判例の中にも、不法行為を理由とする時間外手当相当の損害金の請求が認められたものもあります。この事案は、元従業員が会社に対し、時間外手当及び慰謝料を請求したものです(広島高裁平成19年9月4日判決)。

従業員側は、賃金請求では2年の消滅時効の関係から請求できない部分について不法行為を理由に時間外手当相当の損害金を請求しました。裁判所は「営業所の管理者は、職員の勤務時間を把握し、時間外勤務手当について労働基準法所定の割増賃金請求手続きを行わせるべき義務に違反した」ことなどを認定し、不法行為を理由として時間外手当相当の損害金の請求を認めました。

この判決は会社側が時間外勤務手当に対して自己啓発や個人都合であるなど解釈し時間外勤務手当が支払われないことが常態化しており、労働基準局からも指摘されていたこと、従業員の勤務実態を示す出勤簿などの作成を会社側が長年怠ってきた事情があり認められたものです。

時間外手当を支払わない事案すべてにあてはまるものではありませんが、会社側が法的に認められにくい理由で支払わず、従業員の勤務実態を把握することを長年怠ってきた事情などが認められる場合、不法行為を理由とする時間外手当の請求が認められる可能性があります。

なお、時間外手当を支払わない会社に対しては、労働基準法114条に基づいて時間外手当と同額の付加金を支払うよう裁判所に求めることができ、裁判所の裁量により付加金の支払いが認められる場合があります。

2.慰謝料請求の証拠について

慰謝料請求の証拠としては医師作成の診断書があります。診断書を作成する際、可能であれば、長時間労働などが原因で強いストレスを受けたことによりうつ病を発症したことを明記しておくとなおよいと思います。

3.時効について留意する点

時効は、民法147条に規定されている事由(請求など)に該当すれば中断します。請求と似ている概念として民法153条では催告が規定されています。

催告は、それ自体だけでは時効の完成を6か月間猶予するだけで時効の中断事由ではありません。例えば、会社に対し内容証明郵便で残業代を請求しても、これは催告にあたり、これだけでは時効は中断しません。6か月以内に裁判を起こすなどしてはじめて時効が中断することに注意が必要です。

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