1. 同じ数個の罪を吸収して一罪とする場合

この場合は大きく分けて二つあり、①一個の構成要件において、複数の行為が予定されている場合②構成要件上は予定されていないが、複数の行為を一つの犯罪と評価できる場合、に分けられます。

① 一個の構成要件において、複数の行為が予定されている

例えば監禁罪のように、監禁という『相手の身体を特定の場所に閉じ込める行為を継続して行うこと』が構成要件上予定されている犯罪がこれにあたります。

また、盗犯等防止法2条の常習窃盗のように、複数の行為と法益侵害を生じさせることが、構成要件上一つの犯罪として予定されている犯罪(常習犯と言います)もこの場合に含まれるでしょう。

② 構成要件上は予定されていないが、複数の行為を一つの犯罪と評価できる

一人の被害者の腹と頭を立て続けに二回殴った場合、行為は二個、傷害という法益侵害も腹と頭で二個あると言えますが、時間的な接着性や行為者の主観、また法益侵害の同種性(発生した傷害は一つの身体上で生じているという意味では同じということ)から一つの行為とされる場合がこれにあたります。

ただし、立て続けに二人以上の被害者を殴った場合は、同種性がないため、包括一罪になりません。併合罪となります。

また、Caseのようにある程度時間的に離れている場合であっても、一つの犯罪と評価される場合を接続犯といい、接続犯より時間的接着性は弱いが、法益侵害の同種性と行為者の主観から一体性を認める場合を連続犯といいます。

2. 軽い罪が重い罪に吸収される場合

この場合は大きく分けて三つあり、①法益侵害が実質一個の場合②法益が異なるが、重い罪と軽い罪を別個に扱う必要がない場合③科刑上一罪に類似する場合、に分けられます。

① 法益侵害が実質一個

例えば、窃盗後に続いて家人を暴行して財物を強取した場合、強盗罪一罪しか成立しません。強盗罪も窃盗罪も財産に対する犯罪であり、しかも両行為が短時間の間に同じ被害者に対して行われている以上、強盗罪で処罰すれば窃盗罪も評価されるからです。

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