直接取引

直接取引は、会社が取締役と直接取引を行う場合を指します。例えば、会社が取締役に金銭を貸し付ける行為、会社と取締役との間での売買、譲渡などがそれにあたる可能性があります。また、会社法356条1項2号は「第三者のために」する取引を対象としており、取締役が他の会社の代表や代理人として会社と取引をする場合、「第三者のために」する取引として、ここにいう直接取引にあたります。

間接取引

会社が取締役以外の者と取引をする場合であっても、「取締役」が利益を得て、会社に不利益が生じるような場合があります。このような場合は「間接取引」として規制対象となっています。

会社による取締役個人の債務の保証、連帯保証、物上保証、取締役個人の債務の引受などがその代表例といえます。また、取締役が会社の取引の相手方について強い利害関係を有する場合も間接取引とされる場合があります。会社の代表取締役が、取引の相手方である他の会社の100%株主(代表取締役は別人)であった事例において、会社と当該他の会社との一方的な資材の廉価販売取引が、当該代表取締役による利益相反取引であるとされた事例があります(名古屋地裁昭和58年2月18日判決)。

間接取引にあたるのは取締役個人に利益が帰属する場合だけではありません。 利益が本人ではなく第三者に帰属する場合であっても、間接取引と判断されることがあります。たとえば、P社とQ社両方の代表取締役を兼務するAが、P社がR社に対して有する売掛金債務についてQ社を代表して連帯保証した行為は利益相反取引に当たるとされました(最判昭和45年4月23日)。また、この事例のように他の会社の代表取締役ではなかったとしても、過半数株主として影響力を有する場合には利益相反取引にあたるとされていますし、過半数までは保有していないものの事実上の影響力を及ぼしていたとして、利益相反取引にあたるとされた事例(大阪高判平成2年7月18日)もあります。

利益相反取引にあたらない場合

利益相反取引についての規定は会社を保護することを目的としていると考えられますので、会社に損害の生じ得ない取引は利益相反取引にあたらないとされています。たとえば、取締役の会社に対する無償の贈与行為、取締役が会社に無利子・無担保で金銭を貸し付ける行為などは利益相反取引にあたらないといえます。

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