刑事弁護コラムの10本目は「私から、刑事の示談(交渉)の提案を受けられた被害者の方へ」です。

♦ 大切なことは、ご自身にとって示談の意義

私が、示談(交渉)を進めるにあたって、依頼者側の利益ばかりを求めることはありません。本コラムに目を通していただければ分かるように、それが、弁護士としての社会的職責であり、かつ、示談成立のための一番の近道である、と考えているからです。

(当たり前ですが)最終的に、示談を受けられるかどうかは、ご自身その他関係者の取り巻く状況を十分に考慮していただき、ご自身にとって意義があると思われる場合に決めていただければ結構かと存じます。

被害者の方に、依頼者側の状況に配慮していただいたケースもなくはないですが、それはあくまで、「被害者の方に慮って(おもんばかって)いただいた結果」に過ぎず、本筋ではありません。

示談の交渉過程において、依頼者側(の弁護人)が、示談締結の際の被害者の方の意義を提示できず、また、被害者の方にとっても、示談締結の意義を見いだしていただけないのであれば、もともと示談の成立が困難なケースといって差し支えないでしょう。