刑事弁護コラムの11本目は「否認事件は眠れない」です。

◆ 起訴・判決は、依頼者の人生を逆転しかねない

裁判の判決

否認事件の場合、依頼者本人だけではなく、弁護人も、起訴や判決が気になるものです。

罪体、特に犯人性を争う場合などは、起訴・判決は、依頼者の人生が逆転してしまいかねません。

起訴されたからと言って、有罪と認定されるわけではなく、保釈請求も可能になりますので、保釈が認められれば、ある程度は普通の生活を取り戻すことができます。

ただ、現実には、起訴されてしまうと、職場から無言のプレッシャーを受けたり(酷いところだと、起訴時点で解雇してしまう会社もあり、依頼者とともに職場へ説明と理解を求めに出向かなければいけないケースもあります。)、裁判のため、法律事務所や裁判所に何度も出向かなければいけなくなったり、何よりも、判決で有罪が出てしまうのではないかという不安など、依頼者は、有形無形の負担を被ることになります。

判決は、言わずもがな、でしょう。

それらが分かっているだけに、私も、起訴直前や最終弁論直前に、ついつい夜通しで検察官への不起訴意見書や最終弁論の構想を練ったりすることが、しばしばあります。

辛い徹夜作業をする中で支えとなるのは、「恐怖」と「信念」です。

自分の弁護活動如何で、有罪になってしまうのではないか、という「恐怖」。
「やっていない」という依頼者を、無罪にしなければならない、という「信念」。
瀬戸際の事案であればあるほど、どうしても、否認事件は、眠れなくなってしまいがちです。