「欠陥」かどうかを判断するには、様々な資料等を基準にして、判断することになります。

基準①契約書および設計図書(中古物件等の場合は、重要事項説明書)

一番代表的な資料が、①契約書および設計図書(中古物件等の場合は、重要事項説明書)になります。

契約書および設計図書は、通常、契約内容を反映させたものです。したがって、「欠陥」かどうかを判断するにあたっては、まず、契約書や設計図書等から、契約当事者の主観的意思を判断し、それに照らして、実際の工事内容が、契約書及び設計図書等と合致しているかどうか、を判断することが重要になります。(「主観的瑕疵(かし)」の判断)

設計図書とは、建築物や敷地に関する工事用の図面(現寸図等の施工図は含みません)および仕様書(設計図で表せない工事の仕様を文書・図・表等で示したもので、共通仕様書・特記仕様書・現場説明書・質問回答書を含みます)をいいます(建築基準法2条12号、建築士法2条5項)。

契約書と設計図書によって、契約目的物である建物が具体的に特定されることになります。

基準②建築基準関係法令

また、②建築基準関係法令も、判断基準の一つとなります。

特に構造安全性能(建築基準法20条1項)や防火安全性能(同法21条以下)等は、建物利用者等の安全を確保するための最低基準であり、これを充足することが契約上当然の前提と考えられ、当事者間の黙示の合意の最低限を画するものと解されています。
したがって、建築基準関係法令の定める技術基準に反する場合、「欠陥」があると考え得ることができます(大阪高裁平成10年12月1日判決参考)。

基準③旧住宅金融公庫の住宅工事共通仕様書、日本建築学会等の標準的技術基準

さらに、旧住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)の住宅工事共通仕様書、日本建築学会等の標準的技術基準も、判断基準の一つとなります。

建築基準法令は、具体的な施行法等についてまで詳細に規定しているわけではなく、細部については、技術上確立された標準的技術基準に委ねています。

そこで、建築基準法令の規定が存しない事項については、日本建築学会や旧住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)、国土交通省等の権威ある団体の定める標準的技術基準を遵守・充足する必要があります(松江地裁西郷支部昭和61年10月24日判決、神戸地裁平成9年8月26日判決等参考)。

過去の旧住宅金融公庫の住宅工事共通仕様書は、住宅金融支援機構(フラット35サイト)のホームページから入手可能です。