事例・コラム
取締役会議事録を作成しない場合、どのような不都合が生じますか?
2.会社法は、競業避止義務に該当する取引・利益相反取引によって生じた会社の損害について、当該取引を行った取締役(会社法423条3項1号)のみならず、当該取引に関する取締役会に賛成した取締役について、任務懈怠(過失)の推定規定を置いています(同項3号)。
また、取締役会決議に参加した取締役は、取締役会議事録に異議を留めない場合は、その決議に賛成したものと推定されます(同法369条5項)。
すなわち、取締役は、例えば多数派株主である代表取締役が、会社から多額の金銭の借入れを行おうとしていたり(利益相反取引)、ライバル(会社)になり得る事業を別に立ち上げようとしていたり(競業取引)する場合で、会社経営上、重大な問題があると考えて反対の意見を持っていたとしても、取締役会議事録できちんと反対意見として明記しておかないと、その後、会社が倒産し、あるいは倒産の危機に陥った場合に、後で会社債権者や少数株主から、代表取締役と共に多額の賠償責任を負わされる危険が生じることになります。
3.取締役は、代表取締役に対して、忠実義務を負うのではなく、会社に対して責任を負っており、ひいては会社に対して利害関係を有する会社債権者や(少数)株主に対しても、責任を負っています。
そのため、上記の通り、個々の取締役は、事情に応じ損害賠償責任を追及されるリスクを負っています。
そのこととの均衡上、取締役会での議論の結果、誰の意見が反映された決議であるかについて、明らかにしておくことが求められているといって良く、かかる観点からも、取締役会議事録を作成すべきことが求められています。
このように、取締役会議事録は、法律上のみならず、実際上も作成すべきことを要請されているといえます。