事例・コラム
お盆休み中の緊急出張案件。実の息子(8歳)を児童虐待したとして逮捕・勾留・起訴されたが、臨床心理士のサポートを得るなどの具体的な再犯防止プログラムを構築した結果、執行猶予判決に落ち着く
20代女性からのご依頼
相談前
お盆休み中の法律相談を実施したところ、他に相談を受け付けてくれる弁護士が見つからない、ということでご来所。児童虐待で近日中に逮捕予定であることを警察から匂わされており、早急に相談に乗ってほしかったとのことで、逮捕前段階から弁護人として受任することになりました。
相談後
逮捕まで数日間の余裕があったため、臨床心理士の紹介や勾留満期後の保釈の段取りなどを逮捕前にご本人と詰めました。逮捕後は児童相談所との折衝、臨床心理士による心理所見書の作成・カウンセリング(認知行動療法)の実施・継続受診の確保、保釈手続き、本人の家庭環境調整などを行いました。
弁護士からのコメント
本人(母親)が強く望んでいた、刑事裁判の判決が出るまでの実の息子(児童相談所にて保護)との面談実施は残念ながら叶いませんでした。私のみ実の息子と面談してその様子を本人(母親)に伝えることも物理的に不可能ではなかったと思いますが、時期的・状況的に私との面談が子供の成長に悪影響を及ぼす可能性があったこと、臨床心理士の協力や被害の程度等から既に執行猶予が見込まれていたこと等、当時の状況から断念せざるを得ませんでした。この案件に限らず、被害者側の利益と加害者側の利益をどのように調整するかは難しい課題であり、刑事弁護を行う者の永遠のテーマです。本人(母親)が児童虐待を行ってしまった背景を臨床心理士や本人とともに探っていく中で、本人が「(周囲の人から)実の息子だけ、たくさんの愛情をもらうなんて、ずるい。正直に言うと、嫉妬の気持ちがあった。」と言っておられたのもとても印象的でした。いわゆる虐待の連鎖を断ち切るのは決して容易ではありません。執行猶予判決が下されたからといって、本質的な問題までも解決したことにはならず、ご本人が真に更生されることを心より祈るばかりです。(関係者のプライバシー保護のため、解決事例の一部を意図的に改変しております。悪しからずご了承ください。)