事例・コラム
株主総会決議の不存在、無効、取り消し
3 株主総会決議取消
株主総会取消の訴えは、会社法の中で最もよく提起される訴訟です。
これは一定の取消事由がある場合に、一度なされた決議を取り消すことを目的とした訴えです。取消の訴えについても上記同様、株主の利益と会社の利益との調和が図られており、取り消しの訴えが提起できる場合として、以下の4点が会社法831条に規定されています。
1点目は、株主総会決議があった日から3ヶ月以内であること(出訴期間、1項本文)。
2点目は、株主総会の招集手続きまたは決議の方法が、法令・定款に違反する場合(1項1号)。
3点目は、株主総会の決議内容が定款に違反する場合(1項2号)。
4点目は、株主総会の決議について、特別利害関係を有する者が議決権を行使し、これによって著しく不当な決議がされた場合です(1項3号)。
以下、簡単ではありますが、代表的な例を挙げていきます。
(1)株主総会の招集手続きまたは決議の方法が、法令・定款に違反する場合
ア 招集手続または決議の方法の法令・定款違反
招集手続きに違法があるとされる場合は、以下のような場合です。
(ⅰ)取締役会設置会社における、「口頭」での招集通知(299条2項、3項違反)
(ⅱ)招集通知期限を守らなかったこと(299条1項違反):
公開会社では、総会決議の2週間前、非公開会社では1週間前までに招集を通知する必要があります。
(ⅲ) 株主が出席困難な日時・場所を定め、総会を行う場合:
取締役が、自己の責任追及を免れるため、株主の出席を妨害する目的で総会日時・場所を定めた場合です。
イ 決議の方法の法令・定款違反
(ⅰ)株主の議決権行使を制限した場合:
株主は、その地位に基づく権利として、議決権を行使できます。会社による制限は原則として許されません。
(ⅱ)代理人による議決権行使を違法に制限した場合:
上記のように、株主は代理人によって決議をできることが法律で認められています。したがって、正当な理由がないのに、会社がこれを制限することはできません。