はじめに

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友人や恋人と口論となり、相手方がカッとなって暴力を振るってきたので咄嗟に殴り返したら、打ち所悪く相手は死んでしまったので、その発覚を恐れてアリバイ工作した…なんて話はミステリーなんかでよく見る展開ですが、このような展開を見ると「これって正当防衛だから素直に警察に行けば良かったのでは」なんて思う方、多いのではないでしょうか?

もっとも、具体的にどのような場合であれば正当防衛が認められるのかを法律的に正しく理解することは容易ではありません。そこで、正当防衛が成立するのはどのような場合なのか説明します。

成立要件

法律上、正当防衛は民法720条と刑法36条に規定されていますが、ここでは刑法上の正当防衛について解説します。

刑法36条には「急迫不正の侵害に対して自己または他人の権利を防衛するため、やむを得ずした行為は、罰しない」とだけ書かれています。

これを分解すると①「急迫」②「不正の侵害」③「自己または他人の権利」④「防衛するため」⑤「やむを得ずした行為」の五つに分けることができます。従って、この①〜⑤を満たす場合であれば、正当防衛と認められることになります(①〜④だけを満たす場合は過剰防衛(刑法36条2項)となります)。

1.急迫

判例によれば、「急迫」とは「法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていること」(最判昭和46.11.16刑集25巻8号996頁)をいいます。すなわち、生命・身体、財産などに対する危険が具体的に迫っている状況ということです。