3.(会社宛てに送られてきた)白紙委任状の取り扱い

(1)

実務上、株主が提出してきた委任状の全部または一部が未記入であることは良くあります。

このような場合、会社担当者は、どのような扱いをすればよいのでしょうか。

ちなみに、ある株主を参加扱いにするか不参加扱いにするかの対応を誤ると決議取消事由になる可能性があります。参加(扱い)にするべき株主を不参加(扱い)としてしまった場合(最判昭和42年3月14日判決)、不参加(扱い)とするべき株主を参加(扱い)としてしまった場合(最判昭和30年10月20日判決)、どちらの場合でも決議取消事由となり得ますので、注意が必要です。

(2)

会社法310条1項は株主の議決権行使の機会を保障するためのものであり、出来る限り株主の合理的意思に沿う形で委任状を有効として取り扱い、株主の議決権行使を保障することが望ましいと考えられます。

そうすると、全部または一部が未記入の委任状は、委任者である株主としては、委任状を送付した先の者またはその者が指名した者の意思にその記載を委ねている(意思を有している)と解するのが合理的意思解釈といえます。

そのため、会社宛てに送られてきた白紙委任状は、(空欄部分をこちら側で埋めても埋めなくても)会社側が指名する人物を受任者として議決権の代理行使を認めるべきことになります。

なお、東京地裁平成19年11月22日判決(モリテックス株主総会決議取消請求訴訟)は、白紙委任状取り扱いそのものが争点となった事案ではありませんが、会社提案の議案について賛否を記載する欄を欠いた委任状を無効として議決権数に計上しなかった株主総会決議について、出席議決権数の集計方法(とそれに基づく可決承認の判断)に法令違反があるとして決議取消事由があることを認め、それに関連して、(株主提案の議案についての)賛否の欄を白紙にして(株主に)委任状を交付した株主の議決権の代理行使を認めました。

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