事例・コラム
盗撮をしていた元彼は罪にならないのですか?
3.軽犯罪法 について
軽犯罪法では、以下の通り、規定されています。
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第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留または科料に処する。
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二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
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同条同号には、「正当な理由がなくて」「人が通常衣服をつけないでいるような場所」を「ひそかにのぞき見た」行為を罰することになっております。
「ひそかにのぞき見た」(行為)については、平成3年11月5日気仙沼簡易裁判所判決において、「8ミリビデオカメラを用いて便所内の女性の姿態等を撮影する「盗み撮り」行為は、軽犯罪法1条23号の盗視罪に該当し、犯人がその撮影内容を見ていなくても、同罪の既遂罪が成立する。」とされておりますので、ご相談の案件のように、携帯電話での盗撮行為も、「ひそかにのぞき見た」(行為)に該当する可能性が高いと思われます。
「人が通常衣服をつけないでいるような場所」については、性行為を行った場所が問題になると思われます。例えば、自宅の寝室で性行為を行ったと仮定すると、「人が通常衣服をつけないでいるような場所」とは一概に言いにくい?と思われる点はあるものの、条文は「住居」自体を「人が通常衣服をつけないでいるような場所」と位置付けていること、他人の住居の庭先に侵入してその住居内をひそかにのぞき見た場合に罰せられた裁判例があること(昭和57年3月16日最高裁判所第三小法廷判決の事案)に照らせば、「人が通常衣服をつけないでいるような場所」に該当する可能性はあると思われます。
「正当な理由がなくて」との点は、恋人関係にある(あった)ことをもって、「正当な理由」があるとは、当職個人の心情としては、絶対に認めたくなく、また、そのように解されるべきではない、と考えますが、当職が調べた限りでは、関連する裁判例が見当たりませんでしたので、何ともいえないところです。
結論としてまとめますと、元彼の盗撮行為は、軽犯罪法違反になる可能性はあるものの、特に、性行為を行った場所・元恋人関係にあった点等から、同法違反とならない可能性が残る、ということになります。
なお、元彼の民事上の責任は、昭和40年3月8日東京地方裁判所判決において、軽犯罪法1条23号が、一種のプライバシーの権利を認める趣旨の規定であることが判断されたこと等に照らすと、慰謝料名目の損害賠償責任が発生する可能性があります。
最後になりましたが、元彼の行為が、道義上、許されるものではないことは、当然のことと思われます。