保育所選考基準の改善および慰謝料の請求は可能でしょうか?

Q.現状の選考基準では、職場復帰のタイミング次第で、同じ条件であっても保育所の入所順位が変化してしまい、不公平です。ルールの改正と、慰謝料の請求することはできるのでしょうか。

私の住むH市の保育所選考基準には復職時の加点を期間限定(復職した次の4月1日で減点)とするルールがあります。このルールにより、同じ条件にも関わらず長く待っている人が減点され、後から来て加点された人が入所するという不公平な状況となっています。

4ヶ月前に私の妻が育休明けで職場復帰したのですが、我が子は4月1日で減点された一方で、4月に復職した同学年の子どもは加点されたため、並び順を追い越されてしまいました。

児童福祉法24条には保育所の選考は『公正な方法』であることが記載されていますが、同条件下でこのような追い抜きが発生するのは不公平ではないでしょうか。

H市には、既に何度も問い合わせをしていますが、H市は全く相手にしてくれません。H市に対し、ルールの改正と慰謝料等を要求したいのですが、そのようなことを求める裁判を起こすことはできるのでしょうか。

自分の住む都道府県のホームページと、その中核市をホームページで調べた限り、このような期間限定の加点をしているのはH市だけでした。

A.入所不承諾通知が届いてから60日が経過しているため、取消訴訟を行うことはできません。ルールの改善の方法の1つとしては、弁護士会へ人権救済申立を行う事が考えられます。

1.市のルールを問題とする方法①~異議申立or審査請求→取消訴訟~

H市の保育所入所の不承認通知を争う(市のルールを問題とする)方法としては、まず、保育所入所の不承諾通知に対して、異議申立若しくは、審査請求を行う方法があります(市町村によって、異議申立か審査請求かが異なります)。不承諾通知に、不服がある場合の申立方法が記載されているかと思います。

異議申立や審査請求が棄却されると、裁判所に対して、取消訴訟を提訴することになります。本件でも異議申立・審査請求や、取消訴訟の中で、保育所入所点数表の不合理性を主張することになるでしょう。

ただし、いずれの不服申立の手続きも、「処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内」に申立てなければならないので、注意が必要です。本件では、入所不承諾通知が届いた翌日から、すでに60日が経過していると思われますので、不服申立手続き(審査請求・異議申立)も取消訴訟もできないことになります。

2.市のルールを問題とする方法②~慰謝料の請求~

理論上、不合理な内規により保育所に入所できなかったことを理由として、慰謝料を請求する訴訟を行うことが可能です。実際に、そのような訴訟が行われた事例もあります。この場合、取消訴訟とは別個の裁判になります(国家賠償請求)。

3.提訴した場合に想定される最大の争点は?~市町村の裁量の範囲内か否か~

保育所入所点数表は、おそらくH市の内規だと思われますので、提訴した場合に想定される最大の争点は、裁判所が「保育所入所点数表を不合理だと判断してくれるかどうか」であると思われます。

4.市町村の裁量とH市の内規(の当否)について

個人的な感覚としては、H市の内規には、違和感を覚えます。

職場復帰が年度をまたぐか否かで保育の必要性に変わりがあるとは考えられないこと、育児休暇の期間(復職日)は、本人によって決められる事柄ではないことからです。

5.関連裁判例

待機児童に関する裁判では、大阪府東大阪市を被告とした裁判があります(※)。保育所に入所できなかった父母が、審査請求を経たのち、入所保留処分の取り消しを求めた裁判です。後に、損害賠償に訴えを変更しました。

裁判の中で、入所基準の杜撰さも争点とされました。大阪地方裁判所は、判決で、父母一人当たり15万円の賠償を認めました。この判決は、行政手続き法や行政不服審査法という手続き法上の東大阪の違法を認めました。

※大阪地方裁判所平成14年6月28日判決の要旨
  • ①入所選考の審査基準が公開されていなかったことが、行政手続き法5条3項の規定に違反する
  • ②本件の各保留処分の通知において、処分の理由が示されていないことが、行政手続き法8条1項に反する
  • ③本件での審査請求手続きにおいて、口頭意見陳述の機会が与えられなかったことが行政不服審査法25条1項に違反する
  • ④審査請求に対する裁決書の理由記載が不十分で、行政不服審査法41条1項に違反する

しかし、他方で、児童福祉法24条本文、但し書きに対する違法は認めませんでした。

6.提訴にあたって、知っておいていただきたいこと

保育所入所の不承認を問題とする訴訟において、慰謝料請求で高額な金額が認められることはないと思われます。前記の判決のように、慰謝料が認められた事例でも、金額的には15万円に留まっています。 そのため、経済的な負担を考えると、訴訟は、「義憤」「世直し」的な意味合いが強いことをご留意いただく必要があります。

7.その他解決方法(特に法律的な方法)

H市の内規を変えるための法律的な方法としては、護士会への人権救済申立が一つの方法として考えられます。「保育を受ける権利の侵害がある」「入所が認められた児童との間に不平等が生じている」などを理由として申し立てると、弁護士会が調査を行います。調査により、「人権侵害がある」と認定された場合、H市に対して「警告」「勧告」「要望」の処置を書面で交付し改善を求めることになります。

H市がこれに従う義務はありませんが、参考までに、紹介させていただきます。なお、人権救済申立の手続きについては、弁護士会のホームページをご覧ください。

大阪弁護士会のホームページはこちら

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