◆ 氏名、所在地、電話番号等の秘匿希望の相談は、基本的に対応できない趣旨について

昨年(2013年)2月に、電話、メール、FAX等での無料法律相談を開始して約1年が経過し、大変多くのご相談をいただきました(※ 現在、無料法律相談を実施しておりません)

ご相談をいただく中で、当職が受任するに至った案件も多数あり、インターネットを介した弁護士需要の大きさや広がり、あるいは、従前とは全く異なる受任経路が確立された時代がすでに到来していることに、遅ればせながら、驚きをもってこの1年を受け止めさせていただいている次第です。

ところで、無料法律相談に対応させていただく中で、たびたび、氏名、所在地、電話番号等について、匿名や秘匿による相談を希望される方がおられます。

このような希望を持たれる方については、これらの情報を明らかにしていただくようお願いするとともに、明らかにしていただくことができない場合は、誠に遺憾ながら、基本的には、ご相談をお断りしているのが現状です。

1年の経過を期に、氏名、所在地、電話番号等の秘匿希望の相談に対応できない趣旨について、私の考え、ないし、弁護士としての職務姿勢を知っていただく必要があるのではないかと考えました。

そこで、本コラム(のシリーズ)では、関係法規等を交えながら、匿名や秘匿相談をお断りする意義について、説明させていただきたいと存じます。

◆ 弁護士に(も)倫理規定がある

専門家の倫理規定に関連するものとして、医師には医師法等が、司法書士には司法書士法等が、行政書士には行政書士法等があるように、弁護士にも、弁護士法や弁護士職務基本規程等が存在いたします。

したがって、当然のことながら、私も、私以外の弁護士も、これらの規程から離れたフィールド、ないし趣旨に反するフィールドで、弁護士業務を行うことは出来ません。

◆ ~「基本的人権の擁護」と「社会正義の実現」~ 弁護士が社会的法律的に要請される地位

弁護士法1条(1項)は、

「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」

と規定しています。

医師の職務が、

「医療と保健指導を司ることによって、公衆衛生の向上と増進に寄与し、国民の健康的な生活を確保する。」こと(医師法1条)

司法書士の職務が、

「登記、供託及び訴訟等に関する手続きの適正かつ円滑な実施に資し、もつて国民の権利の保護に寄与することを目的とする。」こと(司法書士法1条)

と規定されていること等と比較すると、弁護士が法律的に要請される地位、ひいては社会的に要請される地位は、「基本的人権の擁護」「社会正義の実現」の2点に特殊性があることが分かります。

ただちには分かりにくいかもしれませんが、これらの弁護士(業務)の理念が、実は、私が、匿名や秘匿相談を基本的にお断りする基礎となっているのです。

次回に続きます