前回のコラムでは売買契約の場合の責任主体が誰であるかを説明させていただきました(前回の記事はこちら)。今回は仲介業者の責任を説明いたします。

①仲介業者の立場

不動産仲介業者(宅地建物取引業者)は、重要事項説明義務(宅建業法35条)等を中核とする信義誠実を旨とする業務上の注意義務を負っています。

この義務の対象は、仲介業者と不動産仲介契約を締結した相手方に限定されないので、仲介業者は、直接契約関係に無い第三者に対しても注意義務を負わなければなりません(最高裁判所昭和36年5月26日判決)。

すなわち、売主と不動産仲介契約を締結したに過ぎない場合であっても、仲介業者は、買主に対して、注意義務を負っているのです。

②重要事項説明義務(宅建業法35条)

仲介業者が、重要事項説明義務を負う事項は、宅建業法35条に例示列挙された事項に限らず、一般的に取引当事者(になろうとする者)が不動産取引を行うか否かの意思決定を行う上で重要な要素となる事項を含むと解されています(東京地裁平成13年6月27日判決、大阪地裁平成15年11月26日判決等)。

③「欠陥」等を知っていた場合の責任(宅建業法47条1項)

宅建業法47条1号は、35条による重要事項説明義務の他に、「宅地もしくは建物の所在、規模、形質、現在もしくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額もしくは支払方法その他の取引条件または当該宅地建物取引業者もしくは取引の関係者の資力もしくは信用に関する事項であって、宅地建物地理被企業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの」について、「故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」を禁じています。

そのため、仲介業者は、住宅に「欠陥」があることや建築基準法令違反の事実を知っていたにもかかわらず、これを買主に説明しなかった場合には、債務不履行責任ないし不法行為責任を負うことになります(横浜地裁平成9年5月26日判決)。

④調査義務

仲介業者は、「欠陥」等を知らなかったからといって、100%免責されるわけではありません。

宅建業法35条に列挙された重要事項に関しては、説明の前提としての調査義務を負うと共に、同条に列挙されない事項であっても、当該事項が取引当事者の意思決定に与える影響力の大きさと、仲介業者の調査の難易度に応じて、一定の場合には仲介業者は調査義務を負うことになります。

仲介業者の調査義務が肯定される場合に、仲介業者が調査を怠っていれば、知っていた場合と同様に、仲介業者は責任を負うことになります。