◆ 信頼関係は弁護士業務のかなめ~弁護士過当競争の時代だからこそ~

相談者情報の提示は、少なからず相談者の方の心理的負担となります。

法律問題、ないしその背景にある紛争は、多かれ少なかれ、相談者の方の内面に踏み込まざるを得ないのが実情であるからです。

それでも、ほとんどの相談者の方からは、滞りなく情報を提示していただいているのが現状です。

不当事件の危険性をはらむ法律問題は、もともと相対的にも絶対的にも少数と思われる上に、弁護士には、職務上、守秘義務が課せられていることも重要な要素としてあげられると思います。

ただ、個人的には、それだけなく、「弁護士」という職業に対する社会的信頼が基礎にあるのではないか、と考えています。

法律があるから、という理由だけで、人は人を信用しないことを、私は、職務経験上、十二分に知らされています。

現在、弁護士人口は激増し、弁護士過当競争の時代が到来しています。

毎年、職にあぶれた多数の司法修習生が現れるとともに、弁護士による横領等の不祥事事件も、度々発生しております。

十分なOJTを積まない弁護士が多数現れてくる中で、将来、あるいは、安易に匿名や秘匿相談を受け付けて、不当事件を誘引・誘発する弁護士が蔓延る時代がやって来てしまうのかもしれません。

そのような時代が来ることは哀しいことであり、当然、避けなければなりません。

そのためには、何より私自身で弁護士理念を体現し、弁護士に対する社会的信頼に確かに応えていくために、匿名や秘匿相談については基本的にお断りしていることを、ご理解いただければ幸甚です。

◆ 匿名や秘匿相談の対応は"弁護士からみた"合理性・相当性が必要

ところで、相談者の方が匿名や秘匿相談を希望しておられるからといって、必ずしも不当事件の危険性をはらんでいる、というわけではありません。

例えば、大阪弁護士会犯罪被害者支援者センターでは、匿名による電話相談も受け付けています。

「弁護士会」としての受付と「個別事務所」としての受付では、趣旨や意味合いが違う面もありますが、私自身、匿名や秘匿相談について、合理性・相当性があると判断し、この1年間で1件のみ、相談を受け付けたことがあります。

匿名や秘匿相談は基本的にお断りしていますが、参考としていただければ幸いです。
なお、匿名や秘匿相談をしてこられた場合に、お断りの理由を逐一申し上げることはしておりませんので、悪しからずご了承下さい。